日本習字ニュース

東北の被災教室 震災を乗り越え再開へ


  • 澤舘貴美先生と生徒さん達

  • 9月時点での大槌町(一部)の様子。
    町の復興への道のりは遠い。

  • 長洞良枝先生と生徒さん達

  • 宮古市の海岸には、がれきが積まれたままであった

 3月11日に発生した東日本大震災は、日本習字教室・会員の方々にも大きな被害をもたらしました。生活面ではいまだ復興への道筋も見えない中、被災地の教室では復興に向けて奮起し、教室を再開した先生がいらっしゃいます。9月中旬、岩手県大槌町と、岩手県宮古市の教室を訪ねました。
 
 大槌町にある澤舘貴美先生の教室は、8月上旬に再開しました。震災発生前は、生徒の半数を男の子が占める元気のよいにぎやかな教室で、生徒同士がとても仲良く、教室で顔を合わせるのを楽しみに、みんな通って来ていたそうです。
 澤舘先生は教室再開にあたって、『津波で何もかも流され、習字教室再開など考えられませんでしたが、避難所で顔を合わせた生徒達から「いつから(習字)やるの?お習字やりたい」と言われるなど、子ども達自身が再開を強く待ち望んでいたこと、保護者の方々も、子ども達の心の「受け皿」となる場所を求めていたこと、また日本習字の方々からの支援を受けたことで再開を決意しました。』と、周りの後押しが再開の原動力となったことを明かし、『現在は、目標を持つことに努め、毎月の検定作品出品はもとより、日本習字展や地域の書道展などに積極的に参加しています。被災地でも、お習字は続けることができます。町づくりと同じように少しずつ、コツコツと積み重ねていきます。全国の皆さんにも、これからもずっと習字を続けてほしいと思います。』と話されました。

 一方、宮古市の長洞良枝先生は、3月11日当日は近所の方と裏山に避難し、津波から難を逃れたそうです。自宅教室は天井まで海水に浸かりましたが、修復し、6月上旬に教室を再開しました。
 長洞先生は、『津波によって住まいの周辺はがれきの山となり、近所の人達も何人かが犠牲になりました。習字教室は諦めかけていましたが、緊急的に生徒部八段位昇段試験(3月末実施予定の日本習字生徒部最高段位取得試験)を4月18日に実施できたことと、5月はじめ、子ども達が習字を習いに訪ねてきたけれど工事中なのを見て帰って行ったことを大工さんから聞き、子ども達が再開を待っているのがわかったことが、再開するきっかけとなりました。』と、再開への道筋を話されました。再開後、遅れた分を取り戻すように、生徒たちは頑張っているそうで、『清書の時、4時間も頑張った子どもがいたので、たとえ今回昇級しなくても、今日頑張った分は次の作品づくりの貯金になっているからねと話しました。教室を再開し、子ども達と過ごす時間に充実感を覚えています。これからは迷わず習字を続けます。』と、今後の決意を話しました。

 大災害から再起し、筆をとる時間を再び得たことで、先生や生徒一人ひとりが書く喜びを改めて実感されているようです。日本習字はこれからも、出来る限りの支援を行い、書を学ぶみなさんを支えたいと考えています。